実は私は、市販の風邪薬をほとんど飲みません。仕事を休めるときは休んで、ひたすら水分をとって、寝ています。
薬剤師なのに変なことを言うようですが、これが正直なところです。市販の風邪薬は、パッケージのうたい文句ではなく、箱の裏の成分表示と「自分は今どの症状が一番つらいか」を照らし合わせて選ぶと、選び方がぐっと変わります。
同じ「風邪薬」という名前でも、中に入っている成分の組み合わせで働き方が違うからです。ここでは、どうしても頼りたいときのために、私が薬局で見ているところをお伝えします。
薬剤師の私が、実は風邪薬をあまり飲まない理由
市販の風邪薬を飲むと、私の場合はパフォーマンスが落ちてしまいます。だから、仕事を休めるときは休んで、水分をとって、ただ寝る。これが一番早いと感じています。
これは、あくまで私自身の選択です。
仕事や家事で休めない、一時的にでもつらい症状を抑えたい、という方がたくさんいらっしゃることもわかっています。そういうときに、風邪薬に頼らざるを得ないのは、まったく自然なことだと思います。だからこそ、頼るときにどう選ぶかを、この記事ではお伝えしたいのです。
それでも頼りたいときのために ―市販薬の成分は「無難」にできている
市販の風邪薬(総合感冒薬)は、風邪のウイルスをやっつける薬ではありません。熱・喉の痛み・鼻水・咳といった、つらい症状をやわらげるための薬です。多くの人の手に渡ることを前提にしているぶん、成分の種類も量も、概ね「無難」に作られているように思います。
なので、「とりあえず総合感冒薬」でひとつを選ぶよりも、自分の症状に合わせて中身を見ていくほうが、無駄なく症状を抑えやすくなります。
ただし、例外もあります。市販薬の中には、もともと病院で処方されていた医薬品が、市販薬として買えるように区分が変わった「スイッチOTC」と呼ばれるものがあります。こうした薬は、一般的な市販薬より効き目がしっかりしているぶん、「要指導医薬品」として扱われ、薬剤師が対面で説明してからでないと購入できない決まりになっています。
市販薬がすべて「無難」というわけではなく、こうした一段しっかりした薬もある、ということも知っておいていただけたらと思います。
箱の裏の成分表示、どこを見ればいいか
風邪薬の成分は、大まかに役割で分けて見ると分かりやすくなります。
- 熱や痛みをやわらげる成分(解熱鎮痛成分):アセトアミノフェンや、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症成分(NSAIDs)が代表的です。同じ「熱・痛みに効く成分」でも、種類によって胃への負担や、飲める方の条件が変わります。
- 鼻水やくしゃみをおさえる成分(抗ヒスタミン成分):後ほどお話しする「眠くなる・ならない」に、大きく関わってくる成分です。
- 咳や痰をやわらげる成分(鎮咳・去痰成分):咳がつらいとき、痰がからむときに助けになる成分です。
パッケージの表には「よく効く」「〇〇にすぐれた効果」といった言葉が並んでいますが、裏を返すと、実際にどの成分がどれだけ入っているかが書いてあります。私は薬局で選ぶとき、まずここを見ます。
自分の「一番つらい症状」を、薬局で相談する
熱・喉・鼻・咳と、風邪の症状は一度にいろいろ出ることが多いものです。でも、成分表示を見比べるだけでは、正直なところ選びきれないこともあると思います。
そんなときは、「自分は今、どの症状が一番つらいか」をひとつ決めて、薬局で相談してみてください。「喉の痛みが一番つらい」「とにかく鼻づまりをなんとかしたい」というふうに絞って伝えていただくと、その症状をなるべく抑えてくれるものを一緒に探せます。
なんとなく総合感冒薬を手に取るより、遠回りに見えて近道になることが多いです。
眠くなる・ならないは、成分の違いから来ている
風邪薬を飲んで眠くなるかどうかは、主に抗ヒスタミン成分が入っているかどうかに関わっています。
眠気の出方は成分によって差があり、「眠くなりにくい」とうたっている薬は、この抗ヒスタミン成分の種類や量が調整されていることが多いです。
これは「眠くなる薬=悪い薬」「眠くならない薬=すぐれた薬」という優劣の話ではありません。仕事や運転がある日は眠くなりにくいものを、逆にゆっくり休める日はしっかり眠気が出るものを、というふうに、その日の生活シーンに合わせて選ぶ目安だと考えると良いです。
余談 ―私が「風邪をひきそう」と感じるサイン
ここからは少し余談です。
私には、風邪をひく前に「あ、そろそろかも」と気づくサインがありまして、柑橘系のものが、ものすごく食べたくなるんです。
みかんなら5〜6個。結構な量なのですが、これは小さいころからずっとそうで、食べて落ち着くと、翌日には体調を崩さずに済むことが多いです。

今になって考えると、これはビタミンCを体が欲しているサインなのかな、と思っています。
ちなみに、ビタミンCと風邪の関係については、まだはっきりしていない部分が多いというのが実際のところなようです。
健康な人が普段からビタミンCをとっていても、風邪をひく確率そのものが下がるわけではない、というのが、これまでの複数の臨床試験をまとめた研究の一致した見方。
一方で、風邪をひいてしまった場合の症状の続く期間については、大人でおよそ1割弱、子どもではおよそ1割強、短くなる可能性があるという報告があります。
マラソン選手やスキー選手のように、体に強い負荷がかかる特別な状況では、風邪の発症そのものが半分程度に減ったという報告もありますが、これは特殊な環境での結果で、日常生活にそのまま当てはめられるものではありません。
そして、症状が出てから飲む場合の効果については、研究によって結果がまちまちで、まだよく分かっていません。
CHIKAしかし「風邪にはビタミンC」という話がこれだけ世の中に広まっているのには、はっきりしたきっかけがあります。
1970年、ノーベル化学賞を受賞した化学者ライナス・ポーリング博士が『ビタミンCと風邪』という本を出し、「大量のビタミンCが風邪を予防・治療する」と発表しました。もともと絶大な信頼を集めていた人物だったこともあり、この主張は広く信じられ、ビタミンCのサプリメントが一気に広まったそうです。
ただし、その根拠はポーリング博士自身と妻の個人的な体験が出発点で、厳密な臨床試験だったわけではなく、その後の研究では、先ほどお伝えしたとおり、期待されたほどはっきりした効果は確認されていません。
それでも、私は自分のみかんの経験を、まったくの見当違いだとは思えないのです。
研究で調べられているビタミンCの多くは、成分として取り出した「アスコルビン酸」単体です。一方、みかんにはビタミンC以外にもたくさんの成分が含まれています。
取り出した成分としてのビタミンCと、まるごとのみかんとでは、体への働き方が同じとは限らないのかもしれない、と思っています。このあたりは、まだよく分かっていない部分だと思って、こんな形でお伝えしています。
私のみかんの話は、あくまで個人の感想です。ビタミンCが理由なのか、みかんに含まれる他の成分なのか、単に体が欲しがるものを食べて安心するからなのか、正確なところは不明・・
ただ、自分の体の小さなサインに気づいて、早めに休む・水分をとるきっかけにしている、という話として聞いていただけたら。



みなさんにも、あ!風邪ひきそう!!!という予兆はありませんか??見逃さずに適切な対処を。
こんなときは市販薬より受診を
市販の風邪薬は、あくまで一時的に症状をやわらげるためのものです。「いつもと違う」と感じたときは、市販薬で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。



私自身、これを痛感した経験があります。
いつもの風邪であれば、しっかり布団をかぶって汗をかいて寝れば、翌日にはケロッとよくなっていました。でも、あのときは違いました。3日たっても4日たっても熱が下がらず、手持ちの解熱鎮痛薬を飲めば一時的には下がるものの、また上がる。
さすがにこれはおかしいと思って病院に行ったところ、肺炎の診断で、そのまま入院になりました。自分でも驚きましたねぇ。。。こういう「いつもと違う」は、受診のサインです。
具体的には、次のようなときは注意してくださいね。
- 高い熱が数日以上続いている
- 息苦しさがある
- 強い頭痛や、首が動かしにくいほどのこわばりがある
- 嘔吐を繰り返している
- 症状が良くなるどころか、悪化する一方である
- 持病(肝臓や胃の病気など)がある、妊娠中・授乳中である、乳幼児である
また、他に飲んでいる薬がある方は、飲み合わせについて医師・薬剤師に確認してから使うようにしてくださいね。「市販薬さえ飲んでおけば安心」というものではありませんので、いつもと違う、なんだかおかしいと感じたときは、我慢せずに相談を。
まとめ
私自身は、実は市販の風邪薬をあまり飲みません。眠くなったり、だるくなったり、パフォーマンスが落ちてしまうので、休めるときは休んで、水分をとって寝ることを選んでいます。
それでも、頼らざるを得ないときのために伝えたいのは、パッケージのうたい文句ではなく、箱の裏の成分表示と「自分は今どの症状が一番つらいか」を照らし合わせて選ぶ、という視点。



今はスマホなどで成分を検索すると、「これは抗ヒスタミンの成分」とか検索もできますもんね。
次に薬局に風邪薬を買いに行くときは、一度、箱の裏を見比べてみてください。そして、どうしても選びきれないときは、遠慮なく薬局のスタッフに、一番つらい症状を伝えて相談してみてください。
その他薬の入手経路について詳しく知りたい方は「処方箋なしで薬を買う方法は?薬剤師が教える4つの選択肢」も、是非ご一読を。
薬の飲み合わせが気になる方は、こちらの記事(「薬の飲み合わせ」で起こる思わぬ体調不良と、その防ぎ方)も参考になると思います。










