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アリは人工甘味料を食べない?「甘い」のに砂糖とは違う、甘味料と体の不思議

アリと砂糖

人工甘味料と砂糖を並べて置いたら、アリはどちらを食べるのか?

以前、友人の子供が夏休みの自由研究でこれを調べていました(なんて鋭い視点!)。 結果は、アリは人工甘味料に一切寄り付かなかった、というものでした。

「じゃあ、アリも寄り付かないものを、私たちは口にしているの?」 そう気になった方もいるかもしれません。

結論からお伝えすると、アリが来なかったのは「人工甘味料が危ないから」ではありません。アリと人とでは、甘さを感じる仕組みがそもそも違うのだそうです。

そして人の体の中でも、「舌が感じる甘さ」と「栄養として体に届くもの」は、別々に扱われています。

だから甘味料は、天然か人工かで分けるより、「体の中でどう扱われるか」で見たほうが、ずっとすっきり整理できるんです。

目次

そもそも「甘い」とは何?

「甘い」は、食べ物そのものが持っている性質ではありません。私たちの舌のセンサーが、その物質に反応した結果です。

舌には、甘さを感じとる「甘味受容体(T1R2/T1R3)」というセンサーがあります。 面白いのは、このセンサーが、形のまったく違う物質にも反応することです。

  • 砂糖
  • ステビア
  • スクラロース
  • アスパルテーム
  • 甘草(リコリス)の甘味成分・グリチルリチン

化学的な構造はばらばらなのに、どれも同じセンサーに反応して「甘い」と感じます。砂糖も多くの甘味料も、センサーの主な「くっつき場所」は共通です。ただ、センサーにはほかにもくっつける場所があって、そちらにくっついて甘さを感じさせる物質もあります。

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ここで大事なのは、「甘い=糖」ではないということ。

砂糖は糖ですが、ステビアやスクラロースは糖ではありません。舌は「甘い」と感じても、糖として体に入ってくるわけではないものがあるんです。

アリが来なかったのは、危ないから?

いいえ。アリと人とでは甘さを感じるセンサーが違うので、アリの行動から人の安全は判断できません。

昆虫の甘さの感じ方は、人とはルートからして違います。

まず、昆虫は舌ではなく、体のあちこちで「触れて味見」をしています。たとえばガの成虫では、口だけでなく、触角や脚の先にも糖に反応する味覚の神経があるのだそうです。

そして、そこで働くセンサーも人とは別物。ショウジョウバエは糖を感じる受容体を8種類持っていて、その組み合わせで糖を見分けています。人の甘味受容体(T1R2/T1R3)とは、形も仕組みも別の系統です。

つまり「人にとって甘い=アリにとっても甘い」とは限らないんです。

実際、同じ昆虫のショウジョウバエを使った2025年の研究では、カロリーのない甘味料が、甘味の神経だけでなく苦味の神経も刺激すること、そして濃度が高いと、食べる行動をむしろ抑えることが報告されています。

さらに昆虫も、体の中で栄養を確かめています。ショウジョウバエでは糖の受容体が脳でも働いていて、体の中の栄養を感じとるセンサーの役割もあると考えられています。

2017年には、ショウジョウバエが「甘いのにカロリーが入ってこない」ことを食べた後で学習し、その甘味料の価値を下げる、という研究もあります。研究者はこれを「Caloric Frustration Memory(カロリーが得られなかった記憶)」と名付けました。

そしてアリには、もう一つ大事な段階があります。仲間を呼ぶかどうか、です。

アリは、餌を見つけた1匹が巣に戻るとき、道しるべになるにおい(フェロモン)を残して仲間を呼びます。アリの種類によっては、この道しるべのつけ方が砂糖水の濃さによって変わることが報告されています。濃い砂糖水ほど、しっかり仲間を呼ぶんですね。

アリにとって砂糖は「おいしいもの」である前に、群れを支える大切なエネルギー源です。砂糖に行列ができるのは、1匹1匹が甘さを感じただけでなく、群れとして「ここに集まろう」となった結果でもあります。逆に、最初に見つけた1匹が「価値なし」と判断して仲間を呼ばなければ、行列はできないのかもしれません。

ただ、甘味料についての研究はハエが中心で、アリで同じことが起きているかまでは分かっていません。アリの種類や、甘味料の種類・濃さ、お腹の空き具合によっても、結果は変わりえます。そしてもちろん、アリや虫の結果を、人にそのまま当てはめることはできません。

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それでも、友人の子供の自由研究は 「人が甘いと感じること」と「栄養になること」は、同じなんだろうか? という、とてもいい問いを掘り当てているなぁ・・と感心してしまいました。

人の体では、「甘い」と「栄養」はどう届く?

人の体でも、甘さの情報と栄養の情報は別々のルートで届き、段階ごとに確かめられています。

  • :「甘いものが来た」
  • :「実際に何が入ってきた?」
  • 血液:「ブドウ糖は増えた?」
  • :「この食べ物には、どのくらい価値がある?」

実は、甘味受容体の仲間は腸にもあります。 といっても、腸が甘さを「味わっている」わけではありません。何が入ってきたかを感知するセンサーの一部として働いている、というイメージです。

砂糖なら、この4段がきれいにそろいます。 舌が甘いと感じ、腸に糖が届き、血液中のブドウ糖が増え、すい臓からインスリンが出る。甘さと栄養が一致しているんですね。

一方、スクラロースのような甘味料では、舌は「ものすごく甘い!」と感じても、血液に届く糖はほとんど増えません。

ここから「人工甘味料は脳をだます」「甘さを感じただけでインスリンがどっと出て、血糖がおかしくなる」という説明をよく見かけます。 でも、そこまで単純ではありません。こうした高甘味度甘味料は、一般にそれ自体では血糖を上げないとされています。

7つの甘味料は、体の中でどう違う?

同じ「甘い」でも、体の中での通り道はそれぞれ違います。よく名前を聞く7つを並べてみました。

甘味料甘さ(砂糖を1として)体の中での扱われ方血糖分かっていること・注意点
砂糖1ブドウ糖と果糖に分かれて吸収される上がる摂りすぎるとエネルギー過多につながりやすい
ステビア数百倍小腸ではほとんど吸収されず、腸内細菌が分解するほぼ上げない腸内細菌への影響は、研究によって結果が分かれる
羅漢果数百倍甘味成分(モグロシド)の分解に腸内細菌が関わる砂糖のようには上げない人での長期のデータはまだ少ない
エリスリトール砂糖より弱い大部分が小腸で吸収され、ほぼそのまま尿へ出るほとんど上げない多く摂るとお腹がゆるくなることも。心血管との関連を示した研究あり
アスパルテーム約200倍アミノ酸などに分解されて吸収される通常の量ではほぼ上げないフェニルケトン尿症の方は注意が必要
スクラロース約600倍ほとんど代謝されず、大部分は便に、一部は吸収されて尿に出る単独ではほぼ上げない腸内細菌や血糖の反応への影響を示した研究あり
甘草約150〜300倍腸内細菌が分解し、その代謝物が体に作用する砂糖のようには上げない摂りすぎで血圧上昇・カリウム低下など

※この表は優劣の順位ではなく、体の中での「通り道」の違いを並べたものです。

この中から、とくに誤解されやすい2つを少し掘り下げます。

ラカントの主役は、羅漢果ではなくエリスリトール

「ラカント=羅漢果の甘味料」と思っている方は多いかもしれません。 でもラカントS(顆粒)の原材料表示を見ると、最初に書かれているのはエリスリトール。羅漢果エキスはその次です。

羅漢果の甘味成分は甘さが強すぎるので、そのままでは砂糖と同じ感覚で使えません。そこでエリスリトールで「かさ」と甘さを整えて、砂糖と同じくらいの量で使えるようにしているんですね。

つまりラカントを知るには、羅漢果よりもエリスリトールを知ることのほうが大事なんです。

エリスリトールは、吸収されてもほとんど代謝されずに尿へ出ていくので、血糖はほとんど上がりません。

一方で2023年には、心臓の検査を受けた人たち(心血管のリスクが高めの人が中心)を調べた研究で、血液中のエリスリトールが多い人ほど、その後3年間の心筋梗塞や脳卒中などが多かった、という関連が報告されました。実験では、血小板を固まりやすくする方向の作用も示されています。

ただ、これは「関連が見つかった」段階です。エリスリトールはもともと体の中でも作られる物質で、食べた量と血液中の量、病気との因果関係はまだはっきりしていません。この研究には慎重な見方をする論評も出ていて、今後の研究を待つ段階です。

人工甘味料は腸内細菌を変える?

「変える場合もあるが、甘味料の種類と人によって違う」というのが、今の段階で言えることです。

2022年に発表された研究では、健康な大人120人に、サッカリン・スクラロース・アスパルテーム・ステビアを2週間摂ってもらいました。その結果、サッカリンとスクラロースのグループで、平均すると血糖の反応が悪くなり、腸内細菌の変化とも関係していました。しかも反応には大きな個人差がありました。

一方で、2024年の研究では、ステビアを12週間摂っても、腸内細菌の構成は変わらなかったと報告されています。

だから「人工甘味料は腸内細菌を壊す」とも、「何も起きない」とも言えません。 甘味料の種類 × 量 × その人のもともとの腸内細菌によって、反応が違う可能性がある。それが今の研究の到達点です。

「天然なら安心」とは言えない?――薬剤師として気になる甘草の話

言えません。甘草は植物由来の天然の甘味料ですが、摂りすぎると血圧が上がったり、体のカリウムが減ったりすることがあります。

甘草の甘味成分グリチルリチンは、腸内細菌によって分解されます。その代謝物が、腎臓にある酵素の働きを邪魔すると、体に塩分と水分がたまりやすくなり、逆にカリウムは出ていきやすくなります。 その結果、むくみや血圧の上昇、低カリウム血症が起こることがあり、これを「偽アルドステロン症」といいます。

気になるのは、甘草が「薬」と「食品」の両方に入っていることです。

甘草は、漢方薬のエキス製剤の約7割に含まれている、とても身近な生薬です。医薬品のグリチルリチン酸には、1日に配合できる量の上限や、一定量を超えると注意事項を添えるルールがあります。

一方、食品添加物としての甘草抽出物には、使用量の制限がありません。のど飴、漬物、佃煮、醤油やたれなど、意外といろいろな食品に「甘草」「カンゾウ抽出物」と表示されて入っています。

ふだんの食事で口にする程度なら、通常それほど心配はいりません。 ただ、甘草を含む漢方薬を飲んでいる方が、甘草入りの食品からも重ねて摂っている、ということは起こりえます。原材料表示に「甘草」の文字を見つけたら、ちょっと思い出してもらえたらと思います。

甘草を含む漢方薬などを続けていて、手足のだるさ、しびれやこわばり、力が抜ける感じ、こむら返りや筋肉痛、むくみ、血圧の上昇などがあるときは、自己判断で続けずに医師や薬剤師に相談してください。高血圧や腎臓の病気がある方、利尿薬を飲んでいる方は、飲み始める前に相談しておくと安心です。

漢方薬どうしでも、甘草は重なることがあります。こむら返りによく使われる芍薬甘草湯と、葛根湯を一緒に飲んだときの甘草の量については、こちらの記事で詳しく書いています。

一方で、「人工」と一括りにされるアスパルテーム、スクラロース、サッカリンも、構造も体の中での扱われ方もそれぞれ違います。 天然だから安心、人工だから危険、という線ではきれいに分けられないんですね。

私はこう付き合っています(まとめ)

私は、甘味料を生活の場面で使い分けています。

甘さに関しては、主に蜂蜜、アガペシロップ、黒糖などを使っています。 料理の種類によっては「喜界島 粗糖」を。

普通にちょっとダイエットを意識する時は、ラカントS(顆粒)を使っています。

蜂蜜も黒糖も粗糖も、体の中では「糖」として扱われる側です。ラカントSの主役はエリスリトール。 それを知ったうえで、量と場面で選んでいます。

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蜂蜜は1歳未満の赤ちゃんには与えないでくださいね。乳児ボツリヌス症のおそれがあります。

また、糖尿病などで治療中の方は、甘味料の切り替えについても主治医に相談を。

WHO(世界保健機関)は2023年に、体重を管理する目的で、ステビアやスクラロース、羅漢果のような砂糖以外の甘味料を使うことは勧めない、という指針を出しています(条件付きの勧告)。

その根拠となった調査では、長く使い続けると2型糖尿病や心血管の病気のリスクが高まる可能性も示唆されています。 ちなみにこの指針は、エリスリトールのような糖アルコールは対象にしていません。

また、もともと糖尿病がある方も対象外です。

そしてこれは、個々の甘味料の安全性(どのくらいまでなら摂ってよいか)を評価し直したものではなく、「毒だから禁止」という話ではないです。甘味料を何に替えるかだけでなく、どのくらい甘いものを欲する食生活になっているか、も見てほしいということなんだと思います。

アリが砂糖には集まったのに、人工甘味料には一切寄り付かなかった。 友人の子どもの自由研究から見えてくるのは、「人工甘味料は危険」という話ではなく・・

「甘い」とは、食べ物そのものの性質ではなく、体がその物質をどう受け取ったかという感覚です。 だから同じ「甘い」でも、砂糖、ステビア、羅漢果、エリスリトール、人工甘味料、甘草では、そのあと体の中で起きることがまったく同じではないんです。

天然か人工かではなく、その物質が体の中でどう扱われるのか。 それを知っておくと、甘いものとの付き合い方が、少し気楽になると思います。

以上、甘さについて色々と調べたことを皆さんにお伝えいたしました!日々の「甘さ選び」の参考になれば嬉しいです。

参考資料

  • Cui M, et al. The heterodimeric sweet taste receptor has multiple potential ligand binding sites. Curr Pharm Des. 2006;12(35):4591-4600.
  • Kojima I, Nakagawa Y. The role of the sweet taste receptor in enteroendocrine cells and pancreatic β-cells. Diabetes Metab J. 2011;35(5):451-457.
  • Arntsen C, et al. Artificial sweeteners differentially activate sweet and bitter gustatory neurons in Drosophila. Sci Rep. 2025;15:20785.
  • Fujii S, et al. Drosophila sugar receptors in sweet taste perception, olfaction, and internal nutrient sensing. Curr Biol. 2015.
  • The larva and adult of Helicoverpa armigera use differential gustatory receptors to sense sucrose. eLife(論文番号 91711).
  • Schilman PE. Trail-laying behaviour as a function of resource quality in the ant Camponotus rufipes. Psyche. 2011;2011:139385.
  • Musso PY, et al. Ingestion of artificial sweeteners leads to caloric frustration memory in Drosophila. Nat Commun. 2017;8:1803.
  • Suez J, et al. Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance. Cell. 2022;185(18):3307-3328.
  • Singh G, et al. Consumption of the non-nutritive sweetener stevia for 12 weeks does not alter the composition of the human gut microbiota. Nutrients. 2024;16(2):296.
  • Witkowski M, et al. The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk. Nat Med. 2023.
  • Cramer T, et al. Plasma erythritol and cardiovascular risk: is there evidence for an association with dietary intake? Front Nutr. 2023.
  • World Health Organization. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. 2023.
  • 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」(令和4年2月改定)
  • 並木隆雄「甘草を含有する漢方薬の副作用の頻度」日本医事新報
  • 札幌市衛生研究所 年報 第28号(グリチルリチン酸の配合量に関する記載)
  • 理化学研究所 プレスリリース(2008年9月9日)甘草のグリチルリチン生合成に関する研究
  • 食品安全委員会 第35回企画専門調査会資料(2010年)スクラロースの甘味度
  • 味の素株式会社 お客様相談センター よくあるご質問(スクラロース)
  • 消費者庁「ハチミツによる乳児のボツリヌス症」
  • サラヤ株式会社 ラカントS 顆粒 商品表示(原材料名)
アリと砂糖

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この記事を書いた人

CHIKAのアバター CHIKA 薬剤師

薬剤師CHIKA

2025年まで、現場の薬剤師として勤務。薬剤師歴はトータル25年以上。
日々の患者さんとの対話を通して、「薬に頼りすぎない健康」の大切さを実感しています。

このサイト「薬剤師CHIKAの部屋」では、食事・生活習慣・自然な健康法などについて、薬剤師の視点からわかりやすく解説しています。

また、「ようこそ還元くんの世界へ。」という情報発信ブログと
CHIKACHAN HOUSEというショップも運営しています。

20代で慢性関節リウマチを発症しましたが、さまざまな試行錯誤を経て克服しました。

その経験もふまえ、「体を整える」という視点から健康や暮らしに役立つ情報を発信しています。

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