美容院で、担当の美容師さんがふと、こんな話をしてくれました。
美容師さんこの間、目にものもらいができちゃって。けっこう大きくなって目立つから、さすがに病院に行ったんですよ。
1件目の眼科では目薬を出されたんですけど、全然よくならなくて…。
それで2件目の眼科に行ったら『目を温めること』と『マッサージ』をすすめられたんです。
それをやったら、目の中のゴロゴロが“プチッ”って潰れて、それで治ったんですよ!
とのこと。
まぶたが腫れていると、人に会うたびに気になりますよね。目薬をさしているのに引かないと、「なんで治らないんだろう!?」と焦ったりもします。
この話を聞いて、私はすぐに「それは“霰粒腫(さんりゅうしゅ)”だったのでは」と思いました。



「ものもらい」とひとことで言っても、実は2つのタイプがあるのです。
タイプによって合う手当ても、効く薬も違います。目薬が効かなかったのは、薬が悪かったからではなく、原因が違っていたからかもしれません。
ものもらいの2つのタイプ|麦粒腫と霰粒腫の違い
| タイプ | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 麦粒腫(ばくりゅうしゅ) | ばい菌(黄色ブドウ球菌など、皮膚にふだんからいる菌) | 赤くて痛い、うみが出る |
| 霰粒腫(さんりゅうしゅ) | あぶらがつまる(感染ではない) | コロコロふくらむ、痛くないこともある |
ただ、霰粒腫でも炎症が強いと、見た目が麦粒腫とそっくりになることがあります。自分で見分けるのは難しいので、表は「目安」として見てくださいね。
美容師さんの場合は、あぶらがつまってできる「霰粒腫」だったのでしょう。1件目の眼科では、おそらく抗菌剤の点眼薬が処方されたのだと思いますが、ばい菌が原因ではない霰粒腫には効果が薄かったと考えられます。
霰粒腫は、まぶたにある「マイボーム腺(脂を出す管)」がつまって、脂がたまり、しこりのようになってしまう症状です。そこで役立つのが、「温めること」と「マッサージ」。
ものもらいは温める?冷やす?
家でできる手当ては「温める」が基本です。霰粒腫にも麦粒腫にも、温めることがすすめられています。ただし、しこりを押しつぶしたり、うみを自分で出そうとしたりはしないでください。
目を温める意味とは?
目を温めるというと、「疲れ目に効く」「血行をよくする」というイメージがあるかもしれません。でも実は、目の中の脂(あぶら)を溶かして流しやすくするという大切な目的もあります。
このように温める方法は「温罨法(おんあんぽう)」と呼ばれています。特別な道具は必要なくて、たとえば、蒸しタオルを使えば、家庭でもすぐに実践できます!
蒸しタオルは、手首の内側に当てて熱すぎないかを確かめてから、目を閉じてまぶたにのせてください。
マイボーム腺マッサージの基本的なやり方
- 手をきれいに洗う
- 温かい蒸しタオルで5〜10分、まぶたを温める
- 上まぶたは上から下へ、下まぶたは下から上へやさしくマッサージ
力はいりません。まつげの生え際に向かって、脂をそっと送り出すイメージです。美容師さんは「プチッと潰れた」と話していましたが、これは眼科で教わったケアを続けた結果です。自分で潰そうとして強く押すのはやめておきましょう。
このマッサージを日ごろから続けておくと、マイボーム腺がつまりにくい状態を保つ助けになると言われています。
眼科で使われる薬|目薬が効かないことがある理由
麦粒腫は菌が原因なので、抗菌薬で治療します。いっぽう霰粒腫は感染ではないため、抗菌の目薬では手応えがないことが多いのです。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と霰粒腫(さんりゅうしゅ)に使われるお薬(処方薬)
| 種類 | 使用される薬 | 主な製品名(例) | 使用される場面 |
|---|---|---|---|
| 抗菌点眼薬 | レボフロキサシン オフロキサシン ガチフロキサシン | クラビット点眼液 タリビッド点眼液 ガチフロ点眼液 | 麦粒腫:〇(基本治療) 霰粒腫:△(感染を伴う場合のみ) |
| 抗菌眼軟膏 | オフロキサシン | タリビット眼軟膏 | 麦粒腫でうみが出ているときなどに使用 |
| ステロイド点眼薬 | フルオロメトロン | フルメトロン点眼液など | 霰粒腫:△(炎症が強い時・感染なしに限る) ※慎重な判断が必要 |
| 抗菌薬(内服) | セファレキシン アモキシシリン クラリスロマイシン | ケフレックス サワシリン/パセトシン クラリス | 麦粒腫:〇(腫れが強い、広がっている場合) 霰粒腫:△(膿がある、再発時) |
ものもらいになり眼科に行ったとき、上の表にあるようなお薬を処方してもらったことがあるのではないでしょうか。
これらの成分を含むお薬は市販薬にはないので、眼科に行って処方してもらう必要があります。
市販にも「ものもらい」用の抗菌目薬はありますが、主な抗菌成分はサルファ剤(スルファメトキサゾール)で、こちらも菌に向けたお薬です。使ってみても良くならないときは、それ自体が「タイプが違うのかも」というサイン。眼科で診てもらいましょう。



この中でステロイドに関してはなぜ「慎重な判断が必要」とあるか・・?
これは眼圧が上がってしまうことがあるからなんです。
「薬を使っているのに良くならない」と感じたときの考え方は、薬との付き合い方|薬剤師が教える、賢く使って手放すコツにもまとめています。
治らないときはセカンドオピニオンも◎
今回の美容師さんのように、1件目の治療が合わなかった場合、別の病院で改めて診てもらうことはとても大切です。ドクターの見立てによって、処方内容が変わることはよくあるからです。
ただし、霰粒腫が大きくなりすぎてしまった場合は、温めたりマッサージしたりしても改善が難しく、切開手術が必要になることもあります。放っておかずに、早めに受診するのがおすすめです。
早めに眼科へ行きたいサイン
- 赤み・腫れ・痛みが強い、まぶた全体が腫れる、熱が出る
- 見えにくい、かすむ
- 温めても数週間たっても小さくならない、むしろ大きくなる
- 同じ場所に何度もできる、そこだけまつげが抜ける
まれですが、霰粒腫に見えて別の病気(まぶたのがんなど)が隠れていることもあります。とくに年齢を重ねてからの「なかなか治らないしこり」は、自己判断せずに診てもらってくださいね。
治らないときはセカンドオピニオンも◎
今回の美容師さんのように、1件目の治療が合わなかった場合、別の病院で改めて診てもらうことはとても大切です。ドクターの見立てによって、処方内容が変わることはよくあるからです。
ただし、霰粒腫が大きくなりすぎてしまった場合は、温めたりマッサージしたりしても改善が難しく、切開手術が必要になることもあります。放っておかずに、早めに受診するのがおすすめです。
「目から健康がわかる」ドクターも
少し話はそれますが、眼科の先生の中には「目を見ただけで体の不調を言い当てる」ような、まるで占い師のような方がいらっしゃいます。
たとえば、私の友人は眼科で「ちょっと血圧が高いかもしれませんね。測ったことありますか?」と聞かれ、実際に測ってみたら上が160を超えていたそうです。
また、別の方は「何か心配事を抱えていませんか?」と見抜かれてドキッとした、なんて話もありました。
「余計なお世話だ」と感じる方も中にはいて薬局で怒り出す方もいましたが、こうした経験豊富なドクターの観察力に驚かされることが本当に多いです。
日ごろから、まぶたをいたわる
美容師さんが最後に



その先生ね、目を温めたりマッサージするのは予防にもいいって教えてくれたんですよ。すごく良心的じゃないですか?
と話してくれました。
症状が出てから対処するのではなく、日頃から目をケアすることが大切なのだということを改めて感じましたね。。
温める・マッサージのほかに、アイメイクをその日のうちにきちんと落とす、目をこすらない、コンタクトレンズを清潔に扱う。どれも小さなことですが、まぶたを清潔に保つ助けになります。
まとめ
- ものもらいには、菌が原因の「麦粒腫」と、あぶらがつまる「霰粒腫」がある
- 家での手当ては「温める」が基本。押しつぶさない
- 抗菌の目薬が効かないときは、霰粒腫かもしれない。治らない・くり返すときは眼科へ
ちょっとした違和感を放っておかず、日ごろから自分の体の声を聴くことやセルフケアを心がけたいですね。
体が出している小さなサインの話は、見逃さないで!体の小さなサインが教える健康の危機にも書いています。
出典・参考
- 公益社団法人日本眼科学会 「霰粒腫」(目の病気・病名から調べる)
- MSDマニュアル家庭版 「霰粒腫(さんりゅうしゅ)と麦粒腫(ものもらい)」(2024年2月最終更新)
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus “Chalazion”
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)一般用医薬品の添付文書情報(抗菌目薬の例)










