水溶性はこれ、不溶性はこれ……と食品の表を見比べているうちに、献立を考えること自体が少し面倒になってしまった方へ。
実は薬剤師の私も、食物繊維の種類を意識して食べたことは、ほとんどありません。
水溶性と不溶性の違いは、「水に溶けるかどうか」と「お腹の中での働き方」です。ただ、きのこにも根菜にも、実は両方が入っています。どちらか一方だけを選んで食べることは、ふだんの食事ではまずありません。
だから私は、分けて覚えるより、一緒に煮ることにしています。秋や冬は、きのこと根菜をたっぷり入れた鍋。それだけです。
この記事では、2つの食物繊維の違いと、きのこ・根菜にどう入っているかを、薬剤師の目で確かめたことと一緒にお話しします。
水溶性と不溶性の食物繊維、何が違う?
いちばんの違いは、水に溶けるか、溶けないかです。そのせいで、お腹の中での働き方も変わります。
| 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | |
|---|---|---|
| 水に入れると | 溶けて、とろみやぬめりになる | 溶けずに水を吸って、ふくらむ |
| お腹の中では | 腸内細菌のエサになりやすい | 便のかさを増やし、腸を内側から刺激する |
| 多い食材の例 | 海藻、大麦、果物など | きのこ、豆、穀類、野菜など |
どちらが良い・悪いではなく、役割が違う、と考えるとわかりやすいと思います。
きのこと根菜は、どっちに入る?
きのこは不溶性が中心で、ごぼうなどの根菜は両方をしっかり含んでいます。
文部科学省の食品成分データベースで、いくつか見てみました(可食部100gあたり、プロスキー変法という測り方の値です)。
| 食材 | 水溶性 | 不溶性 |
|---|---|---|
| ぶなしめじ(生) | 0.3g | 3.2g |
| えのきたけ(生) | 0.4g | 3.5g |
| ごぼう(ゆで) | 2.7g | 3.4g |
| にんじん(皮なし・生) | 0.8g | 1.9g |
きのこは、ほとんどが不溶性。それでも水溶性がゼロなわけではありません。ごぼうは、水溶性も不溶性もたっぷり。にんじんも両方入っています。
つまり、1つの食材の中に、2つの食物繊維がまざっているんですね。表で「きのこ=不溶性」と覚えてしまうと、この感覚がこぼれ落ちてしまいます。

「1:2が理想」は気にしなくていい? 薬剤師が数字の出どころを見て思うこと
「水溶性1:不溶性2が理想」という言葉をよく見かけます。でも、私は献立で比率を計算しなくていいと思っています。
薬剤師の仕事をしていると、数字を見たらまず「どこから来た数字だろう」と確かめる癖がつきます。この「1:2」も確かめてみたのですが、国が示している基準は食物繊維の「総量」だけでした。水溶性と不溶性の割合までは決められていません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日にとりたい食物繊維の目安(目標量)を、18〜64歳で男性20〜22g以上、女性18g以上としています。
それに、さきほどの表のように、食材の中で2つはもともとまざっています。比率を計算するより、いろいろな食材を一緒に食べるほうが、ずっと現実的です。
きのこと根菜は、鍋に一緒に入れてしまう
きのこと根菜というと、私は圧倒的に鍋です。秋や冬は、鍋を結構やります。
理由は、体のためというより、楽だから。いろいろ入れて、美味しく食べられるから。それで結果的に続いています。
きのこは、えのき、しめじ、しいたけ、まいたけなど、普通にスーパーで売っているもの。根菜類は、そのとき冷蔵庫にあるもの何でも。
締めは、雑炊派です。最後に卵も入れれば、タンパク質もとれますし。
汁も飲みたい派です。水溶性の食物繊維は、その名のとおり水に溶けるタイプなので、汁まで飲んで、雑炊で最後までいただくのは、食べ方としても理にかなっているのかな、と思っています。

患者さんが教えてくれた、鍋の話
薬剤師として薬局で働いていたころ、2か月に一度くらいのペースで、お薬をとりに来られる患者さんがいました。仮にAさんとします。状態が落ち着いていたので、そのくらいの通院で十分な方でした。
あるとき、ふと気づいたんです。
「あれ?Aさん、やせました?」
全体的に、ひと回り小さくなった気がしました。
Aさんは「あれ?気が付いた??そうなんだよね、5、6キロやせた感じ」と。
CHIKA病状が悪くなっているのかな?と心配しましたが、どうやらそうではありませんでした。
「鍋を自分で作ったら美味しくて、もう毎晩鍋にしているくらい。そしたら自然にやせたの。野菜とかきのことか、おいしいじゃない?」
以前は晩酌もあたりまえで、炭水化物をはじめ、結構たくさん食べていたそうです。それが、きのこや野菜をたくさん鍋に入れて食べていたら、それでお腹がいっぱいになるようで。
「なんか、お通じもいいし、からだも軽いんだ」とおっしゃっていました。
これは、鍋を食べればやせる、という話ではありません。Aさんは鍋を作ること、食べることにはまって、食事の中身が自然に変わった。その結果として、こうなったのだと思います。
食物繊維の種類を気にしていたわけでも、何かを計算していたわけでもありません。おいしいから続けていたら、食事のほうが変わっていた。私が鍋をいいなと思うのは、こういうところです。
なお、急に体重が減ったときは、Aさんのようにはっきりした理由がない限り、病気のサインのこともあります。気になるときは、医療機関で相談してください。
意識していなくても、見返すと両方そろっていた
食物繊維については、とくにこれと言って意識していることはありません。でも、便秘がないので、普段の生活で適切に食物繊維はとれているのかな?と思っています。(個人の感想です)
あらためて自分の食事を見返してみると、鍋のほかにも、海藻類が好きでよく食べていますし、おやつに干し芋を食べたりもしています。海藻は水溶性が多い食材、さつまいもは両方を含む食材です。意識していなくても、2つの食物繊維が自然にそろっていました。


食物繊維が気になったら、分類表とにらめっこする前に、自分のいつもの食事を一度見返してみてください。そのうえで足したくなったら、こんな順番がおすすめです。
- きのこだけを急に増やすより、汁物や海藻の小鉢を「もう一品」
- いきなりたくさんではなく、少しずつ(急に増やすと、お腹が張ることがあります)
- 水分も一緒に
便通のことそのものは、こちらの記事に書いています。



いろいろ考えると、日本の食事・食材って本当に優秀なんですね
食事で様子を見ないでほしいとき
便通が急に変わってそれが続く、便に血が混じる、強い腹痛やお腹の張りが続く、理由のわからない体重の減少がある。こうしたときは、食事で様子を見ずに、医療機関を受診してください。
また、腸の病気がある方や、お腹の手術を受けた方などで、食物繊維のとり方について指示を受けている方は、その指示を優先してください。腎臓の病気などでカリウムを控えるよう言われている方も、注意が必要です。いも類や海藻などカリウムの多い食材があり、カリウムは水に溶けて鍋の汁にも出てきます。食べ方は主治医や管理栄養士に相談してください。
かたい根菜やきのこは、やわらかく煮たり、小さく切ったりすると食べやすくなります。
分けて覚えるより、一緒に煮る
水溶性と不溶性は、水に溶けるかどうか、お腹の中での働き方が違う2つの食物繊維です。でも、きのこにも根菜にも、その両方が入っています。
だから、表で分けて覚えなくても大丈夫。薬剤師の私も、種類を意識せずに、きのこと根菜の鍋を楽しんできました。
体のための食事が「義務」になってしまうと、続けるのはしんどいものです。楽で、美味しくて、気づいたら続いている。そのくらいの食べ方が、いちばん心地よいと思っています。
腸と暮らしの話は、こちらにまとめています。
出典・参考
- 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月)
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「食物繊維の働きと1日の摂取量」
- 東京女子医科大学病院 腎臓内科「慢性腎臓病の食事療法」










