リンゴ、桃、梨、さくらんぼ。私はいつからか、これら「バラ科」の果物を食べると、口の中がイガイガしたり、腫れたりするようになりました。子どもの頃は平気だったのに、大人になってから。
長いあいだ「食べすぎたせいかな」と思っていたのですが、調べてみると、どうやらそれだけではないようなのです。今日は、自分の体を責めずに付き合っていくための話を、薬剤師の視点も少し交えて書いてみます。
リンゴ・桃・梨・さくらんぼ ── 私の「バラ科アレルギー」の話
私自身、特定の果物にアレルギーがあります。リンゴ、桃、梨、さくらんぼ……どうやら「バラ科」のフルーツが苦手な体になったようです。
ふしぎなのは、子どもの頃にはこんなことはなかったこと。大人になってから、急に出てきました。だから最初は「好きで桃やリンゴをよく食べていたから、食べすぎてアレルギーになったのかな」と、自分の食べ方を疑っていました。思い当たる節が、自分なりにあったのです。
でも、この「食べすぎたから」という考えは、どうやら少しちがうのかもしれません。
「食べすぎ」じゃなかったかもしれない ── 花粉と果物がつながる仕組み
大人になってから、特定の果物だけがダメになる。これには、よく知られた仕組みがあるそうです。
花粉症のある人が、花粉とよく似た構造のタンパク質を持つ果物や野菜を食べたときに、口の中やのどにかゆみ・腫れ・イガイガが出る——これを「口腔アレルギー症候群(OAS)」、花粉との関わりに注目して「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ぶのだと、アレルギーの専門領域では説明されています。
たとえばカバノキ科の花粉(シラカンバ・ハンノキ)にアレルギーがあると、その花粉のタンパク質とよく似た形のタンパク質を持つ、バラ科の果物——リンゴ、桃、さくらんぼなど——にも体が反応してしまうことがあるのだそうです。日本では、シラカバ(北海道や長野に多い)やハンノキ(本州を中心に広く)が、この原因になりやすいと言われています。
この仕組みでおもしろいのは、「先に花粉に反応する体になって、あとから果物にも反応するようになる」という順番です。だとすれば、子どもの頃はなくて大人になってから出てきた私のような出方も、説明がつきます。
つまり私の場合も、「食べすぎて自分の体を壊した」というより、花粉の方の事情で、体が”似たもの”を取り違えているだけなのかもしれません。実際私も医療機関でアレルギーのチェックをしてもらったとき、シラカバ花粉には強い反応が出ていましたね。

火を通すと食べられることがある、という不思議
「生はダメでも、火を通すと平気」という人がいます(実際私もそうです)。これにも理由があるそうです。
果物に含まれるこのタイプのタンパク質の多くは、加熱や消化で壊れやすく、だから症状も口の中だけにとどまりやすいのだと言われています。生のリンゴはダメでも、煮たりジャムや焼き菓子にすると食べられた、という話は、この性質から来ているようですね。
ただ、ここには大事な例外があって——それは次の、大豆の話につながります。
アレルギーは果物だけじゃない ── 大豆・乳製品、蕎麦など人それぞれ
アレルギーといっても、ほんとうに様々です。大豆アレルギー、乳製品アレルギー……人によって、体の地図はまったく違います。
さきほど「火を通せば平気」には例外がある、と書きました。その代表が大豆。
じつは大豆にも、さっきの果物と同じ”熱に弱いタイプ”のタンパク質があります。だから、しっかり煮たり、納豆やお味噌のように発酵させたものでは、反応が出にくくなることが多いのだそうです。
ところが豆乳は、加工が浅くて、このタンパク質がそのまま残りやすい。しかも、ごくっと一度にたくさん飲めてしまいます。だから「大豆そのものは普段ふつうに食べているのに、豆乳のときだけ症状が出る」ということが、起こり得るのだそうです。
しかもこの場合、口の中だけでなく、呼吸が苦しくなったり、全身に症状が出るアナフィラキシーにつながることもあると報告されています。実際に、それまで普通に大豆製品を食べていた人が、豆乳を飲んでアナフィラキシーを起こした例もあるそうです。
だから「火を通せば誰でも大丈夫」とは言えません。とくに、
- 唇やのどが腫れる、息が苦しい、声がかすれる
- 全身にじんましんが出る
- 嘔吐・下痢、めまい、気が遠くなる感じがある
- 桃を食べたあとにまぶたが腫れる
——こうしたサインがあるときは、軽く考えずに、すぐ医療機関を受診してください。これは薬剤師としても、強くお伝えしておきたいところです。
アレルギーと薬
実際に私の知り合いのお子さんも蕎麦アレルギーを持っていて、常に「エピペン」を持ち歩いていますね。蕎麦アレルギーはかなり重度の場合、昏睡状態になるくらい危ないアレルギーなんです。
※エピペンというのはアレルギーでショック症状になったとき、アドレナリン(エピネフリン)の働きにより、血管を収縮させて血圧を上げ、気管支を広げて呼吸を楽にするための薬で、自己注射です。このお薬の入手には、お医者さんの診断と処方が必要です。
果物を食べたあとに口の中のかゆみや軽い違和感が出る場合、医療機関では抗ヒスタミン薬が使われることがあります。代表的な成分には、フェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチン、セチリジン、レボセチリジン、ビラスチンなどがあります。
このうち、フェキソフェナジン(アレグラFX)、ロラタジン(クラリチンEX)、エピナスチン(アレジオン20)などは街のドラッグストアや薬局でも購入できます。
※ただし、市販の抗ヒスタミン薬の多くは、花粉やハウスダストによる鼻炎症状を対象とした薬です。
CHIKAしかし、何よりも口に入れないことが一番なのですよね。私も気を付けています。
薬局でいただいた、「食べさせられるものがない」という相談
ここまでは大人になってからの話ですが、赤ちゃんの頃から食べ物にアレルギーのある子どもたちもいます。
私が薬局にいた頃、「食べさせられるものがなくて・・」と相談をいただいたことがありました。そのご家族と一緒に、通販でも買えるアレルギー対応の食品をあれこれ調べたのを、よく覚えています。
ひとつお伝えしておきたいのは——赤ちゃんや子どもの食物アレルギーは、大人の「口がイガイガする」とは、別のものとして考えてほしいということです。
強い症状が出ることもありますし、何を食べさせる・食べさせないという判断は、自己流ではなく、必ずお医者さんと一緒に進めてください。ここは、対応食を探すよりも、ずっと手前の大切な話です。
今は、選べる時代になってきた ── アレルギー対応食という心強さ
そのうえで、昔とくらべると、選べる食品はほんとうに充実してきたと感じます。
当時いろいろ調べて知ったお店を、ご参考までにいくつか挙げておきます。
- クミタス … アレルゲン別に「これを含まない食品」を探して購入できる検索サービスです。 https://www.kumitasu.com/
- 辻安全食品(アレルギーオンラインショップ) … 米粉やグルテンフリーなど、アレルギー対応食を長く手がけているお店です。 https://www.allergy-food.jp/
- もぐもぐ共和国 … アトピー・アレルギーに対応した食品や日用品をそろえた通販サイトです。 https://www.mogumogu.jp/index.htm
- ヘルシーハット … アレルギー対応の惣菜・スイーツ・パンなどを、自社で製造している専門店です。 https://www.healthy-hut.shop/
こうした食品のチョイスがあるのは本当にありがたいことです。
自分の体と向き合う、ということ
最後に。何が自分にとって安全か、人それぞれです。
自分の——あるいはお子さんの——体と向き合って、急がず、よく見極めていく。
私自身、「食べすぎたせいだ」と自分を責めていたのが、仕組みを知って、少し肩の力が抜けました。原因がわかると、責めるのではなく、付き合っていけるようになります。
ただ一つ、今回の話の大枠の流れには書きませんでしたが、大人になってからの「食物アレルギー」は、「農薬」も関係しているのではないかとも考えています。
今自分が食べられない食べ物、結構農薬を使っているものが多いんですよね。
このあたりの話はまた別の記事にて!










