「疲れが取れにくい」「なんとなく体がだるい」という声は老若男女問わず相談を受けてきた事柄です。
忙しい現代社会では、毎日シャワーでサッと済ませる人も多いですが、実はこの“シャワーだけ生活”が、体の不調の一因になっているかもしれません。
今回は、科学的な研究も交えながら「湯船につかることの大切さ」をお伝えします。
「お風呂くらいでそんなに変わるの?」と思う方こそ、ぜひ読んでみてくださいね!
シャワーだけでは“体の芯”が温まらない
まず知っておきたいのは、シャワーでは皮膚の表面しか温まらないということ。
お湯を浴びていると「体が温まった」と感じるかもしれませんが、実際には皮膚の表面温度が一時的に上がるだけで、
体の深部温度(いわゆる“体の芯”)までは届きません。
一方、38〜40℃くらいのぬるめのお湯に10〜15分浸かると、血液循環が全身に広がり、深部体温がしっかり上がります。この温熱効果が、筋肉のこりや冷えの改善につながるのです。
厚生労働省や大学の研究でも、湯船入浴は「血流促進」「疲労回復」「リラックス効果」などの生理学的メリットをもたらすことが報告されています。

湯船に浸かる事は“清潔のため”だけでなく、“回復のため”とも考えられますね!
疲れが取れないのは「湯船不足」かも?
年間を通じて「慢性的な疲労が抜けない」という相談がとても多くありました。
疲れが溜まると、肩こり・腰痛・倦怠感などの“自律神経の乱れ”に似た症状が出やすくなります。こうしたときにおすすめなのが「ぬるめのお風呂」。
38〜40℃の湯船にゆっくり浸かると、交感神経の働きが落ち着き、副交感神経(リラックスをつかさどる神経)が優位になります。これにより、体の緊張がほぐれ、自然と深い呼吸ができるようになります。
実際に東京薬科大学や金沢大学の研究でも、「ぬるめの全身浴は自律神経バランスを整え、疲労軽減につながる」と報告されています。
薬やサプリに頼らなくても、“湯船に浸かるだけ”で体の回復スイッチが入るというのは、とても心強いことですよね。
睡眠の質が上がる「入浴タイミング」
湯船の効果を最大限に生かすコツは、“入る時間”にもあります。
おすすめは寝る1〜2時間前の入浴。
人の体は、深部体温が下がるときに眠気が出るようにできています。
お風呂で一度しっかり体を温め、その後ゆるやかに体温が下がっていくことで、自然と眠りに入りやすくなるのです。
国の研究助成を受けた報告でも、「夜の入浴習慣が睡眠の質を高める可能性がある」とされています。
特に40代以降になると、ホルモンバランスやストレスの影響で眠りが浅くなる方も増えますが、入浴習慣を整えることで“自然な眠気”を取り戻せるケースも多いです。
ただし注意点として、熱すぎるお湯(42℃以上)はNG。交感神経が刺激されて目が冴えてしまうので、
「ぬるめ・ゆったり・15分」が黄金ルールです。
冷え性と肩こりにも効果的
「冷え」と「こり」は、血行不良が関係しています。
湯船につかることで全身の血管が広がり、酸素や栄養を運ぶ血流がスムーズになります。
特に女性に多い“末端冷え性”では、就寝前にお風呂に入ることで手足までぽかぽかし、眠りに入りやすくなる方が多いです。また、肩こりや首のハリも、温熱によって筋肉が柔らかくなりやすくなります。
もしお風呂上がりに軽くストレッチをプラスできれば、血流促進効果がさらにアップします。「疲れて動きたくない」という方は、湯船の中で肩をゆっくり回すだけでもOKだと思います。
肌にも“うれしい変化”が
湯船につかると皮膚の血流も良くなり、老廃物が排出されやすくなります。また、皮膚の角質層に水分がしっかり入り、乾燥を防ぐ効果もあります。
ただし、長時間の高温入浴は逆効果。熱いお湯や長風呂は皮脂膜を奪ってしまい、かえって乾燥やかゆみを招くことも。乾燥が気になる方は、入浴後すぐに保湿ケアをすることで肌の潤いをキープできます。
これは私が以前訪問していた施設で伺ったお話ですが、ご老人の皆様は肌の乾燥を予防するためにあらかじめ湯船にモイスト成分の入った入浴剤を入れているとのことでした。
お若い方でも乾燥肌の方は入浴剤を活用することもいいですね。
最近では「入浴によって皮膚の水分保持能力が改善する」との大学の研究も出ています。シャワーだけより、湯船にゆっくり浸かる方がお肌にやさしいのは確かです。
代謝と心のリズムも整う
入浴で体温が上がると、代謝も一時的に高まります。
「お風呂に入ると少し汗をかく」というのは、体が代謝モードに切り替わっているサイン。血流が良くなることで、老廃物の排出もスムーズになります。
また、湯船に浸かる時間は「デジタルデトックス」の効果も。スマホを置いて、ただ湯気を感じながらぼーっとする時間は、脳を休ませ、自律神経をリセットする最高のリラックスタイムになります。
ストレスで心が疲れているときほど、お風呂時間を“自分を整える時間”として大切にしたいですね。
習慣にすることで見えてくる変化
「湯船に浸かるなんて時間がもったいない、面倒くさい」と思っていた方も、実際に1〜2週間続けてみると、
「寝つきが良くなった」「肩こりが軽くなった」など、小さな変化を感じてもらえることが多いです。
ある調査では、週に5回以上湯船に浸かる人は、心疾患や脳卒中のリスクが低い傾向があるという結果も報告されています。これは、入浴による血管機能改善やリラックス効果が間接的に健康維持に寄与している可能性があると考えられています。
もちろん、これは「湯船さえ入れば病気が防げる」という意味ではありませんが、毎日の小さな習慣が、体のバランスを整えるというのは、科学的にも十分に裏づけのある話です。
効果を高める“入浴のコツ”
せっかく入るなら、効果を最大限に引き出しましょう。
ポイント | おすすめ内容 |
---|---|
湯温 | 38〜40℃のぬるめ |
時間 | 10〜15分程度 |
タイミング | 就寝の1〜2時間前 |
注意点 | 熱すぎ・長すぎはNG(のぼせ・乾燥の原因) |
プラスα | 入浴後はすぐ保湿、白湯で水分補給 |
また、香りによるリラックス効果という観点からも入浴剤や天然のアロマオイルを数滴入れるのもとても良いと思います。
柑橘系やラベンダーの香りは、自律神経を落ち着かせるのにぴったりです。
塩素が気になる!
以前友人に「湯船に浸かったほうがいいよ」と話をしたところ、



水道水って結構塩素が入っているっていうから気になるんだけど。
と言われました。
湯船の場合は、「塩素の除去」を目的とした入浴剤なども市販されていますのでそちらを使ってみるのもいいかと。
炭も塩素を取り除く力がありますね!
ちなみに「シャワーからのお湯も塩素が含まれてますよね?」というご質問もいただくのですが、こちらは対応したシャワーヘッドなどもあるようなので検索してみてください。ここでは割愛します。
ひとこと
私自身、以前は「忙しいからシャワーでいいや」と思っていました。
でも、自分自身が体調を崩したことをきっかけに毎晩湯船に浸かるようになってから、体の軽さや睡眠の深さがまったく違うことに気がついたのですよね。
お風呂は、いわば“天然のセラピー”。
体を温めるだけでなく、心を整え、翌日を気持ちよく迎えるための準備時間です。
「時間がない」と感じる方こそ、1日15分、自分のために湯船につかってみてください。
きっと、“なんとなくの不調”が少しずつやわらぐはず。
まとめ
- シャワーだけでは体の芯まで温まらない
- 湯船入浴は血流促進・疲労回復・リラックスに効果的
- 寝る前のぬるめ入浴で睡眠の質が上がる
- 肌の保湿力アップ・冷え性改善にも期待
- 熱すぎ・長すぎは逆効果。38〜40℃で10〜15分が目安
- 「毎日の小さな入浴習慣」が、心と体の調子を整えるカギ



お風呂は、1日の疲れを洗い流す“心と体のリセットスイッチ”。
今日も一日の終わりに、ゆっくり湯船に浸かってみませんか?