女性も40代を過ぎた頃から、「なんとなく疲れが取れない」「気分が沈みやすい」「眠りが浅い」など、はっきりと病気ではないけれど体調の変化を感じる方が増えてきます。
この“なんとなく不調”の背景にあるのが、女性ホルモン(エストロゲン)の変動による更年期の変化です。
「仕方ない」とあきらめる方も多いのですが、実は生活の整え方次第で症状がぐっと軽くなることも少なくありません。
今日は薬剤師の視点も併せて、更年期を前向きに過ごすための実践的なポイントをお伝えします。
1. 更年期に起こる体と心の変化
女性の体は40代後半から50代前半にかけて、卵巣の機能が徐々に低下していきます。
その結果、エストロゲンというホルモンの分泌が大きく揺らぎ、自律神経や代謝のバランスが乱れやすくなります。
このホルモン変動が影響するのは、体だけではありません。
のぼせ、ほてり、発汗、動悸、肩こり、疲労感、不眠、気分の落ち込み、イライラ…といった多彩な症状が現れるのはそのためです。
更年期の症状には個人差があり、全く感じない方もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらい方もいます。
大切なのは、「年齢のせい」と片づけず、体が送っているサインとして受け止めることです。
2. 体調を整える基本は「生活リズム」
まず取り入れたいのは、規則正しい生活習慣です。これはどんな薬よりも基本になる部分。
● 水分を意識的にとる
エアコンの効いた室内に長時間いると、気づかないうちに脱水気味になることがあります。
軽い脱水は頭痛やだるさを引き起こすことがあり、疲れを感じやすくなります。
朝起きたらコップ1杯の水、日中もこまめな水分補給を意識しましょう。
※ただし「水を飲めば更年期が改善する」というわけではありません。目的は全身の代謝をスムーズに保つことです。
● バランスの取れた食事
更年期には、筋肉量や代謝が低下しやすくなります。
特に意識したいのは、たんぱく質とミネラル。
大豆製品(豆腐・納豆・豆乳など)は、女性ホルモンに似た働きを持つ「大豆イソフラボン」を含み、ホルモンの揺らぎをやわらげる可能性があります。
加えて、緑黄色野菜や海藻、ナッツ類などからマグネシウム・亜鉛・鉄分などを摂ると、エネルギー代謝や自律神経の働きを助けてくれます。
● 睡眠の質を整える
「寝ているのに疲れが取れない」という方は、睡眠の“質”を見直しましょう。
寝る直前までスマートフォンを見る習慣はブルーライトで脳を興奮させてしまいます。
就寝の1時間前にはデバイスをオフにし、ぬるめのお風呂で体を温め、部屋の温度は18〜23℃、湿度は50〜60%に保つのが理想です。
眠りの質が良くなると、ホルモンバランスも自然と整いやすくなります。
3. 更年期にこそ大切な「動く力」
更年期には、運動が大きな味方になります。
厚生労働省や日本産科婦人科学会の資料でも、定期的な運動が更年期症状の軽減に効果的であると示されています。
ウォーキングやヨガ、軽いストレッチなど、無理なく続けられるものを週3回、30分程度から始めてみましょう。
体を動かすことで血流が良くなり、自律神経のバランスが整い、睡眠の質も向上します。

YouTubeなどでも色々なプロの方が運動の動画をあげていたりしますね!
あと、「女性のための30分ジム」など、サポートしてくれる方がいる場所に行くのもいいと思います。
筋肉はホルモンを受け取る「受容体」を多く持つ臓器でもあります。
体を動かすことでホルモンの働きがスムーズになり、気分の落ち込みや疲労感の改善にもつながります。
4. ストレスケアと心の整え方
仕事、家庭、親の介護、人間関係…
50代前後の女性は、人生の中でも特に「心の負担」が大きくなる時期です。
ストレスが続くと、コルチゾール(ストレスホルモン)が高まり、自律神経が乱れ、のぼせや不眠が悪化することがあります。
「何もしない時間をつくる」「自然の中を歩く」「好きな香りを取り入れる」など、心が緩む瞬間を意識的に作ることが大切です。
おすすめは「4-7-8呼吸法」。
4秒で吸い、7秒止めて、8秒かけて吐く——たったこれだけで副交感神経が優位になり、心が落ち着きやすくなります。
寝る前やイライラしたときに数回繰り返すだけでも、体がふっと軽く感じられるでしょう。
5. 腸内環境を整えると、心も元気に
近年、「腸は第二の脳」と呼ばれ、腸内細菌のバランスが心身に影響を与えることがわかってきました。
腸内環境が乱れると、免疫やホルモンのバランスに影響を及ぼす可能性があります。
発酵食品(納豆、ヨーグルト、キムチなど)を意識して取り入れ、野菜・海藻・きのこなどに含まれる食物繊維を十分に摂ることで、腸の動きが整いやすくなります。
腸が整うと、気持ちの安定や肌の調子の改善にもつながるケースが多く見られます。




6. 必要に応じて医療・薬の力を借りる
生活改善をしてもつらい場合は、婦人科や更年期外来に相談することもアリだと思います。
診察ではホルモン値や甲状腺などの検査を行い、必要に応じて治療方針を決めていきます。
症状や体質に応じては、
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方薬(当帰芍薬散・加味逍遥散など)
が用いられることもあります。
漢方薬は「冷えやすい」「イライラする」「眠れない」など、体質や精神面に合わせて選ぶことができるのが特徴です。
ただし、自己判断での服用は避け、必ず薬剤師や医師に相談してください。
副作用や相互作用のリスクを見極めながら使うことで、より安全に効果を実感できます。
7. 「自分だけじゃない」と知ることから始めよう
更年期に悩む女性は、実は日本でおよそ800万人以上といわれています。
同じように悩んでいる人がたくさんいる——その事実を知るだけでも、心が少し軽くなる方も多いのです。
「もう若くないから仕方ない」と閉じこもるのではなく、
「今の自分に合ったケアを探していこう」と前向きに考えることが、改善の第一歩です。
不調は“体が教えてくれるメッセージ”。
無理をせず、焦らず、自分のペースで心と体を整えていきましょう!
まとめ
更年期は決して「終わりの始まり」ではなく、これからの人生を心地よく生きるための転換期だと思います。
生活習慣を見直すことで、体も心も確実に変わっていきます。
- 規則正しい生活と食事
- 質の良い睡眠
- 軽い運動と呼吸法
- 腸内環境を整える
- 必要に応じて医師や薬剤師に相談
この5つを意識することで、更年期を「つらい時期」から「自分を大切にする時期」へと変えることができます。
本当に人それぞれですね