学生時代に生薬の授業で聞いた、「木が枯れていく過程」をふと懐かしく思い出すことがあります。
木が枯れる過程を、0から4の段階で分けて観察した研究があったのだそうで、教授はこう教えてくれました。
樹木は、一見すると急に枯れるように見えるけど、実は長年にわたって少しずつ衰えていく。
表面からは健康そうに見えるけど、根っこの部分では既に衰退が始まっていることもあるんだよ。
これは「段階0」の状態。
表面は元気に見えても、根はゆっくりと枯れ始めている。そして「段階1」に入ると、表面的にも「何かおかしい」と感じる兆候が現れ、そこからさらに進行すると、数年のうちに枯れてしまうのだそう。
この話の続きで、教授は「木は土と一体で生きている」と教えてくれました。木は土から栄養を吸収しますが、そこには単なる栄養だけでなく、土の中に住む微生物の存在が鍵を握っているようで。。
木と土の微生物には「相性」があり、それが崩れると木も弱りやすいのだといいます。
森林全体が衰退するとき、それは木が1本枯れるだけではなく、その場所全体の生態系に変化が生じてしまうとのことで、木と土、そして微生物が織り成すバランスの大切さに感動すらしました。
そして、この話を思い返す度に、「人も同じだ」と感じるんです。
人も見えないところで病を抱える
私たちもまた、見えない部分で徐々に体調を崩していくことがあります。
例えばストレスや不規則な生活習慣は、自覚のないまま蓄積され、気づいた時には病気として表面化することも。日常の「なんとなく不調」というサインを無視し続ければ、木が枯れるように私たちの健康も失われてしまうかもしれないんです。
だからこそ、時々は自分自身と向き合う時間を持ち、心身の状態を振り返ることが大切だと感じています。少し立ち止まって、日々の習慣を見直すことが「自分を守る」ことにつながると強く思います。
見えない存在と共に暮らす
私たちの体には、数え切れないほどの微生物が共生しています。
腸内細菌だけでなく、皮膚や口腔、手のひらなど、体の至るところにそれぞれ異なる菌が生息していて、私たちの体に影響を及ぼします。そして興味深いことに、この菌の割合や種類(細菌叢:さいきんそう)は、個々に異なり、同じ人はいないのだといいます。
さらに、長く時間を共にする人同士では細菌叢が似てくる傾向もあるようで。
「なんとなく似た香りがする」というのも、この細菌叢が影響しているのかもしれませんね。誰かと関わる度に私たちの体内でも「微生物たちの交換」が行われ、私たちは日々、互いに影響し合っているのです。
これらの微生物の構成バランスが崩れると、私たちの体調に影響を与えることもあるのですが、逆にバランスが良ければ体を守ってくれる存在でもあります。
ちなみに「悪玉菌」と呼ばれる微生物たちも、健康を害する菌・・つまり「超極悪菌(コレラ菌など)」の侵入を防ぐ役割を持ちます。木と微生物が共生するように、私たちも菌とのバランスを保ちながら生きているのですよね。
直接私たちの目には見えませんが、なんという世界だろう・・と感心するばかり。
自然から学ぶことの大切さ
木も人間も、自分が気づかないところで根を張り、外からは見えない存在と共に暮らしながら支えられています。現代の生活は、睡眠不足や食生活の乱れ、ストレスなどで体内の菌バランスが崩れがちですが、このバランスを整えることが私たちの免疫力にも大きな影響を与えることは良く知られています。
樹木と人間の共通点から、自然の大切さを改めて実感する今日この頃。
自然の摂理に耳を傾け、自分と向き合う時間を大切にしていきたいですね。