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薬が消化を遅らせる?-胃もたれの原因になる薬と対策を薬剤師が解説-

胃もたれの原因と意外な犯人

「夜ごはんを食べたのに、翌朝まで胃が重い感じがする」
「昔は平気だったのに、最近はちょっとした食事でも胃もたれする」

こうしたお悩みを抱えている方、実は少なくありません。
その原因のひとつとして意外と見落とされがちなのが、薬の影響だと思います。

薬には色々な働きがあり、例えば体の痛みを抑えたり、血糖をコントロールしたり、膀胱の過活動を防いだり。。
ですが、一部の薬は副作用として胃腸の動きをゆっくりにすることがあります。
今回は、薬剤師の立場から「消化を遅らせる可能性のある薬」と「その対策」をわかりやすくお話しします。

目次

薬が消化を遅らせるのはなぜ?

食べたものは胃でドロドロに消化され、小腸に送られて吸収されます。この「胃から小腸に送り出す動き(胃排出)」が遅くなると、胃に食べ物が長くとどまり、胃もたれや重さを感じやすくなります

薬によっては、

  • 胃腸の動きを抑える
  • 消化液の分泌を抑える
  • 満腹感を長く保つように作用する
    といった仕組みで、結果的に消化が遅れることがあるんです。

胃の動きを遅らせる主な薬と商品名

ここでは、代表的な薬をカテゴリ別にご紹介します。
実際の処方名と商品名もあわせて記載するので、服薬中の方は薬と見比べながら確認してみてください。

① オピオイド系鎮痛薬

強い鎮痛作用を持つ薬で、胃腸の動きを抑える作用があります。
がんの痛みや慢性疼痛の治療に使われます。

  • オキシコンチン®(オキシコドン)
  • トラムセット®(トラマドール+アセトアミノフェン)
  • フェントス®(フェンタニル)
  • ナルサス®/ナルラピド®(ヒドロモルフォン)

ポイント
「これを飲むようになってから、なんだか便秘も胃もたれもひどくなったんです」
患者さんからこう相談されることが本当に多いです。
オピオイドは痛みにはよく効きますが、腸の動きを抑える作用が強いため、消化がゆっくりになるんですね。

② 抗コリン薬

自律神経の働きを抑える薬で、胃腸の蠕動運動を低下させることがあります。

  • ポラキス®(プロピベリン)…過活動膀胱の治療薬
  • ベシケア®(ソリフェナシン)…頻尿・尿失禁治療薬
  • アーテン®(トリヘキシフェニジル)…パーキンソン病治療薬
  • ブスコパン®(ブチルスコポラミン)…胃腸のけいれんを抑える薬

ポイント
服用中は「便秘・胃もたれ・口の渇き」などの副作用にも注意が必要です。

抗コリン薬は、膀胱の働きを抑えることで頻尿を改善しますが、同じく胃腸の動きも落としてしまう副作用があります。
「頻尿は楽になったけど、胃もたれがつらくなった」という方、実は多いんです。

③ GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1薬

近年、糖尿病や肥満治療で使われる薬の一部は、胃の働きをあえてゆっくりにすることで血糖上昇を抑えます
そのため、「少しの量で満腹感が続く」反面、胃が重く感じることもあります。

  • オゼンピック®(セマグルチド)
  • ウゴービ®(セマグルチド:肥満症治療)
  • マンジャロ®(チルゼパチド)
  • ビクトーザ®(リラグルチド)

ポイント
「少量で満腹感が続く」という効果はメリットですが、“胃に残っている感”も長引きやすいんです。

④ 抗うつ薬・抗精神病薬の一部

セロトニンやノルアドレナリンに作用する薬の中には、消化管運動を抑制するものがあります。

  • パキシル®(パロキセチン)
  • ジェイゾロフト®(セルトラリン)
  • レクサプロ®(エスシタロプラム)
  • リスパダール®(リスペリドン)

ポイント
これらは脳内の神経伝達物質に作用する薬ですが、副作用として胃腸の動きを抑えることがあるんです。

⑤ 消化を遅らせる糖尿病薬

一部の糖尿病薬は、炭水化物の分解や吸収をあえて遅らせる作用を持っています。

  • グルコバイ®(アカルボース)
  • ベイスン®(ボグリボース)

ポイント
血糖管理のために必要な作用ですが、胃もたれを感じやすい場合があります。

CHIKA

昔ながらのお薬ですが、飲み始めは「おならが止まらない」という副作用もあり。。

薬が原因かもしれないと思ったら

もし「胃もたれが続く」「夜食べたものが翌朝まで残っている感じがする」という場合は、自己判断で薬を中止しないでくださいね。
まずは次の順番で確認していきましょう。

  1. 服用中の薬をリストアップ
    → お薬手帳はこういうとき活躍します!
  2. 薬剤師に相談する
    → 副作用の可能性や、飲むタイミングを調整できるか確認します。
  3. 主治医に症状を伝える
    → 代替薬への切り替えや投与量の調整で改善することもあります。

まとめ

  • 薬には胃や腸の動きを遅らせる作用を持つものがあります
  • 特に影響が大きいのは、オピオイド系鎮痛薬・抗コリン薬・GLP-1系薬
  • 薬が原因かも?と思っても自己判断で中止はとりあえずNG
  • 薬剤師や主治医に相談すれば、薬の見直しや服用方法の工夫で改善することが多いです
胃もたれの原因と意外な犯人

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この記事を書いた人

薬剤師歴20年以上。本業の傍らで「ようこそ還元くんの世界へ。」という情報発信ブログとショップを運営しています。こちらの「別館」では還元くん・メビウスウォーター以外の情報発信を主に行っています。20代で慢性関節リウマチを発症し克服するまでに行ったことや考えたことなども含め、いろいろ発信しています。

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