心理が薬に与える影響 – プラセボ効果とは?
薬剤師として日々の業務で感じることの一つに、薬の効果が患者さんの心理状態に大きく影響されるという事実があります。これを象徴する現象が「プラセボ効果」です。
プラセボ効果とは、実際には有効成分を含まない偽物の薬を服用したにもかかわらず、患者さんが薬の効果を感じてしまう現象を指します。
たとえば、痛み止めを例に挙げると、見た目がまったく同じ2種類の錠剤があります。一方は本物の痛み止め(有効成分を含む薬)、もう一方はただのラムネ菓子(成分がない偽薬)。後者を服用しても患者さんが「痛み止め」と信じていれば、痛みが和らぐ場合があります。これがプラセボ効果。
現在、薬の開発段階でもプラセボ効果の影響を考慮してしっかりと検証が行われていますが、そのメカニズムは未だ完全には解明されていません。
調剤薬局で出会ったプラセボ効果(?)の一例
先日、ある患者さんとのやり取りで、このプラセボ効果について考えさせられる出来事がありました。
その患者さんは高齢の女性で、長年ビタミン剤を服用していました。しかし、最近の医療方針に基づいて、“効果が不明確な薬を漫然と処方しない”という流れに従い、そのビタミン剤が処方箋から外されました。
初めてその変更に気づいたとき、彼女は「先生がいらないと言ったなら仕方ない」と納得して帰宅しました。
しかし、翌月になると、再び薬局を訪れた際に怒りMaxでこう訴えてきました。
あの薬を飲まないと頭と気持ちがはっきりしないし、疲れるんです!!
前の先生はずっと出してくれたから元気だったのに、急にやめられて体がおかしくなったみたい!!!!!!
だから先生に、また出してほしいと頼みました!!!!!!!
その剣幕に圧倒されつつ、処方箋を確認すると、ビタミン剤が元通り処方されていました。医師も患者さんの心理的な訴えに折れたようでした。。
本当に効いているのか、それとも心理的な効果か?
このビタミン剤は、総合ビタミン剤のように多くの成分が含まれているものではなく、単一のビタミンが入った薬でした。効果効能として「疲れが取れる」「頭が冴える」といった記載はありません。つまり、理論上は彼女の体に特別な変化をもたらすことはないはずです。
しかし、彼女にとっては「この薬が効く」という強い信念があり、それがプラセボ効果となって現れていたのだと考えられます。
セルフプラセボの力を活かす
この経験から、私はプラセボ効果が薬だけでなく日常生活にも応用できるのではないかと思うようになりました。
例えば、次のようなフレーズを日常的に口にすることが、心理的にも身体的にも大きな影響を与えることがあります。
- 「私は風邪をひかない」
- 「絶対にこの仕事をやり遂げられる」
- 「毎日健康で幸せだ」
これらのポジティブな暗示は、自分自身に良い影響を与えるセルフプラセボの力として働きます。逆に、「また失敗するかもしれない」「どうせうまくいかない」という否定的な思い込みは、悪い方向に作用してしまうことが考えられます。
プラセボ効果を良い方向に導くために
プラセボ効果の事例は、自分自身の心が身体に与える影響の大きさを再認識させてくれます。この力を活用するには、以下のような方法があります。
- ポジティブな言葉を使う 日々、自分を肯定する言葉を意識して使いましょう。
- 成功体験を振り返る 過去の成功を思い出すことで、自己効力感や自己肯定感を高めることができます。
- リラックスと瞑想 心を落ち着けることで、前向きな思考を持ちやすくなります。
まとめ
プラセボ効果は、薬剤師として患者さんと接する中で何度も実感する現象です。それは科学的に説明がつかない部分もありますが、心理的な力が身体に与える影響の大きさを示しています。
私たち自身も、この力を日常生活で活用し、ポジティブな影響を得ることができると思います!
ぜひ、皆さんもセルフプラセボの力を信じ、良い方向に活用してみてはいかがでしょうか。