――「夜食べたモノは朝までに消化される?」薬剤師がわかりやすく解説します!
「夜食べたものは朝までに消化される」って本当?
これは、私の知り合いの90歳の女性が話していたことですが・・

お医者さんは“夜食べたモノは朝には消化される”って言うけど、ウソだと思うのよ。朝になってもまだ残っている感じがするの。特にお肉を食べた時なんてね。
たしかに、夜遅くにお肉をしっかり食べた翌朝、胃が重い感じがすることってありますよね。
「これ、本当に消化できてるの?」と不安になる方も多いと思います。
結論から言うと――多くの場合、胃は夜のうちにかなり空っぽになります。
ただし、食べたものや体の状態によっては、翌朝まで「残っている感じ」が続くことは十分にあります。
今日は薬剤師の立場から、「人間が食べたものはどのくらいで消化されるのか」を、科学的な根拠と体感の違いの両面からお話しします。
消化の流れと時間の目安
まずは、人間の体で食べ物がどう動くのか、全体像をイメージしてみましょう。
食べ物はまず胃に入り、消化液と混ざりながらドロドロに分解されます。その後、小腸に送られ、栄養を吸収したあと大腸を通り、やがて便として体の外へ出ます。
では、それぞれの場所でどれくらい時間がかかるのでしょうか?
- 胃:固形物の場合、食後2〜3時間で半分くらいは空になります。ほぼ空っぽになるには4〜5時間ほどかかります。
- 小腸:栄養の吸収を担う場所で、通過におよそ2〜6時間。
- 大腸:ここは個人差が大きく、10〜59時間。平均では30〜40時間くらい。
- 口から排泄まで:すべてを合わせると、だいたい24〜72時間です。
つまり、夜7時に夕食を食べたとして、翌朝の時点で胃はほぼ空っぽになっていることが多いんです。
でも――「重い」「まだ残っている気がする」と感じることがあるんですよね。なぜでしょう?
翌朝まで「残っている感じ」がする理由
お肉や揚げ物はゆっくり消化される
その原因のひとつは、食事の内容です。
特にお肉や揚げ物など脂質が多い料理は、胃から小腸への送り出しを遅くすることがわかっています。脂質を多く含む食べ物を食べると、「コレシストキニン(CCK)」というホルモンが分泌され、胃の動きをゆっくりにしてしまうんです。



「夜にステーキを食べた翌朝は胃が重い…」というのは、科学的にも理にかなっています。
年齢とともに変わる消化のスピード
高齢になると、胃や腸の動きが少しずつゆっくりになる傾向があります。
さらに、唾液の分泌量が減ったり、噛む力が弱まったりすると、食べ物を十分に細かくできず、大きな塊のまま胃に入ってしまいます。結果、胃での処理に時間がかかりやすくなるんです。
「若いころは夜遅くに焼肉を食べても翌朝ケロッとしてたのに、最近は胃もたれする」
この記事を読んで下さっている皆さんも、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。
薬の影響も侮れない
薬剤師として強調したいのは、薬の影響です。
例えば、オピオイド系鎮痛薬や抗コリン薬は、胃腸の動きを抑えてしまうことがあります。
最近では、糖尿病や肥満治療で使われるGLP-1受容体作動薬も、胃の働きをゆっくりにする作用があるんです。
「夜食べたものが翌朝まで残っている感じがする」という方の中には、服用中の薬が原因になっているケースもあります。



具体的にどのような薬で?この部分は別記事にしてみました!


「朝まで残っている」の正体は胃ではないかも?
ここまでお話ししてきたように、胃自体は多くの場合、4〜5時間でかなり空になります。
でも、体感的には残っているように感じる。
この違和感の理由は、胃以外にあることも多いんですよ。
- 小腸・大腸への食べ物の移動は翌日以降も続いている
- 食道への逆流が起きていると“胃が重い”感覚になる
- 脂質や塩分の多い食事は翌朝のむくみ感にもつながる



つまり、「胃で消化できていない」というより、消化の全体プロセスが続いているだけなんですね。
翌朝スッキリするためにできること
「夜食べたものが翌朝まで残っている気がする」
そんな方におすすめしたいのは、次のようなちょっとした工夫です。
- 就寝の3時間前までに食事を終える
- 脂っこい料理は量や時間帯を調整する
- 食べ物を小さく切って、ゆっくりよく噛む
- 食後は軽く体を動かす(10〜30分程度の散歩がおすすめ)
- 服用中の薬が影響している可能性があれば、薬剤師や医師に相談する
ほんの少し意識するだけで、翌朝の“重さ”がぐっと軽くなるはずです!
まとめ
「夜食べたものは朝までに消化されるのか?」という問いに、医学的には「胃はほぼ空になる」と答えられます。
でも、食事内容や年齢、薬の影響によっては、翌朝も“残っている感じ”が続くことは十分にあります。
もし「朝起きても胃が重い」「食後すぐに膨満感が強い」「少ししか食べられない」などの症状が続く場合は、消化管の機能を調べる検査もあるので、ご参考までに。