近年、うつ病は「心の病気」というよりも、脳や免疫の働きと深く関係する全身性の疾患として注目されています。
その中でも特に話題になっているのが、ウイルス感染と炎症反応がうつ病の発症や悪化に関与しているかもしれない、という研究。
本記事では、医学的根拠をもとに「うつ病とウイルス感染の関係」について最新の知見をわかりやすく解説します。
1. うつ病の原因は「心」だけじゃない
うつ病は「心が弱いからなる病気」というイメージが強くありますが、医学的にはまったく異なります。
うつ病は遺伝・環境・ストレス・ホルモン・神経伝達物質の働きなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症する多因子疾患です。
近年は、これに加えて免疫系の働きや慢性的な炎症がうつ病の発症リスクを高めているのではないか、という新しい視点が注目されています。
今までうつ病の治療薬とされてきた薬が効かない患者さんの新たな治療アプローチになるのではないでしょうか。
2. うつ病と炎症マーカー(CRP・IL-6)の関連
● 血液検査でわかる「炎症」とうつ症状
過去10年以上にわたり、世界中で多くの研究が行われてきました。
その結果、血液中の炎症マーカーが高い人は、うつ症状を発症するリスクが高いということがわかってきています。
CRP(C反応性タンパク):体内の炎症レベルを示す代表的なマーカー
IL-6(インターロイキン6):免疫反応を調整するサイトカインの一種
あるメタ解析では、IL-6の値が高い人は将来うつ病になる確率が有意に高いことが示されました。
また、メンデル無作為化解析という方法でも、IL-6の活性化がうつ病リスクを高める可能性が示唆されており、炎症とうつ症状の関連は偶然ではない可能性が高まっています。

ちなみに、私が過去にリウマチ治療でお世話になっていた「アクテムラ」は、このIL-6の働きをブロックして体の炎症を抑えるのです。
なんか、リウマチとうつ病の根本原因は近い所にあるのかも?
3. インフルエンザ感染後にうつ病リスクが高まる?
● 英国の大規模研究から見えてきた関連
「インフルエンザにかかると、その後うつ病になるリスクが高まるのでは?」
この疑問について、英国で行われた大規模観察研究が参考になります。
- 対象:2000年〜2013年の患者データ約39万人
- 結果:インフルエンザ感染後にうつ病を新規発症するリスクは 約1.3倍
- 特に感染から30〜180日以内はリスクが約1.57倍に上昇
つまり、「インフルエンザにかかると必ずうつ病になる」というわけではありませんが、統計的に有意な関連があることは確かなようです。
4. 潜伏ウイルス(ヘルペス・EBウイルス)と抑うつ
インフルエンザだけでなく、体内に潜伏するウイルスと抑うつの関係も研究されています。
● ヘルペスウイルスとEBウイルス
- ヘルペスウイルスやEBウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、ストレスなどで再活性化することがあります。
- 一部の研究では、抗体価が高い人は、そうでない人に比べて将来うつ症状を発症しやすいことが示されています。
ただし、この分野はまだ研究途上で、効果の大きさや因果関係ははっきりしていません。



ヘルペスウイルスは8種類のヒトヘルペスウイルス(HHV-1〜8)に分類され、感染部位や症状が異なります。
EBウィルスもヘルペスウィルスの一種です(HHV-4)。
私たちがよく耳にする代表的なものは帯状疱疹の原因となるウィルスですかね(HHV-3)。
ヘルペスウィルスは体内にいても、その人の免疫力がしっかりしていれば発症しないのです。
病後や極度の疲れ、断続的な睡眠不足など極度に免疫力を落としてしまうとヘルペスウィルスに体が負けて症状が出てしまうという感じですね。
【参考】ヘルペスウイルスの分類
ウイルス | 別名・型 | 主な症状・疾患 |
---|---|---|
HHV-1 | 単純ヘルペスウイルス1型 | 口唇ヘルペス、角膜炎 |
HHV-2 | 単純ヘルペスウイルス2型 | 性器ヘルペス |
HHV-3 | 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) | 水ぼうそう、帯状疱疹 |
HHV-4 | EBウイルス | 伝染性単核球症、悪性リンパ腫 |
HHV-5 | サイトメガロウイルス(CMV) | 妊婦感染で胎児異常、免疫低下時の肺炎 |
HHV-6 | ヒトヘルペスウイルス6型 | 突発性発疹、慢性疲労症候群との関連 |
HHV-7 | ヒトヘルペスウイルス7型 | 突発性発疹(まれ)、不明な症状も多い |
HHV-8 | カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス | カポジ肉腫(HIV感染者で多い) |
ちなみに、このEBウィルスはリウマチの原因となっているのでは?とも言われています。



これらのウィルスの感染経路はさまざまで、一度感染すると、一生体に残ります。
ですが、完全に退治する方法が今は見つかっていないのです。
ウィルスが私たちの体に住み着いている状態なので、ウィルスにとって我々は「家」なんですよね。
5. 抗炎症薬・抗ウイルス薬はうつ病に効くのか?
● 抗炎症薬の可能性
炎症がうつ症状に関与するなら、「ロキソニンなどの抗炎症薬を使えば改善するのでは?」と考えるのは自然ですよね。
実際、抗炎症薬を併用した臨床試験がいくつか行われており、メタ解析では次のような結果が出ています。
- 抗炎症薬を追加した群では、抑うつ症状が小〜中程度改善する傾向
- ただし、効果はすべての患者で見られるわけではなく、炎症マーカーが高い人に限られる可能性が高い
- 副作用や長期的安全性についてはまだ十分なデータがありません



ここで考えたいことは、「体の炎症を抑える効果のある食べ物」に注目すること。
たとえば青魚、ベリー類、緑茶、ターメリックやシナモンといったスパイス類など。
これらはネットでも検索できるのでご興味ある方は是非!
● 抗ウイルス薬は現時点で推奨されないと思う
一部の小規模研究では、抗ウイルス薬で症状が改善したという報告もありますが、大規模なRCTで有効性が確認されたわけではありません。
したがって、現時点では抗ウイルス薬をうつ病治療に使うことは推奨されていません。
6. 現時点で言えることと今後の展望
- うつ病と炎症は深く関係している可能性がある
- インフルエンザなどの感染症後に一時的にリスクが上がる可能性がある
- 炎症マーカーやウイルス抗体価を用いたうつ病の層別化診療が、今後の研究テーマになる
- ただし、まだ完全な因果関係は断定できず
今後、血液検査で炎症マーカーを調べて最適な治療を選ぶ個別化医療が進む可能性がありますね。
7. まとめ:症状があるときに大切なこと
うつ病は心だけでなく、体全体の状態と密接に関わる病気です。
「インフルエンザにかかってから気分が落ち込みやすい」など、感染症後に気になる症状がある場合は、早めに医療機関に相談することが大切です。
- 無理に我慢せず、専門家に相談する
- 血液検査などで炎症や他の身体疾患の有無を調べる
- 標準治療に加えて、生活習慣の改善(睡眠・食事・運動)も意識する
最新研究は希望を与えてくれますが、自己判断で抗炎症薬や抗ウイルス薬を使うことは避けましょう。
正確な情報と専門家の支援を得ることが、回復への第一歩です。
でも・・↓下記の記事にあるように薬には注意が必要です。

