こんにちは。
ここ5,6年の感覚なのですが「最近、疲れやすい」「前ほどやる気が出ない」「寝てもスッキリしない」こうした悩みを抱えた40〜50代の男性が、とても増えたと感じています。
先日も、40代後半の会社員Aさんが「検査では異常なしと言われたのに、とにかく体も心もだるい」と不安そうにお話されました。詳しくお話をうかがうと、集中力の低下やイライラ、性欲の低下も気になっているとのこと。年齢や生活背景を考えると、「男性更年期(LOH症候群)」では?と思われるケースです。
この記事では、信頼できる公的機関や学会の情報をもとに、
- 男性更年期とは何か
- どんな症状が出るのか
- 病院ではどんな検査や治療が行われるのか
- 自分でできる生活習慣の見直し
を、わかりやすく解説します。
「ただの年のせい」と思って我慢してしまう前に、ご自身やご家族の体調チェックに役立てていただけたら嬉しいです。
男性にも「更年期」がある?LOH症候群とは
女性の更年期はよく知られていますが、男性にもホルモンの変化による不調があります。医学的には「加齢男性性腺機能低下症」や「LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism)」と呼ばれます。
日本内分泌学会や泌尿器科関連の解説では、男性ホルモン(テストステロン)が中年以降に徐々に低下し、それに伴って身体・精神・性機能のさまざまな症状が出る状態とされています。テストステロンは20〜30代頃にピークを迎え、その後は1年あたり約1%ずつ少しずつ減っていくことが報告されています。
ただし、
- いつから症状が出るか
- どのくらい値が下がると症状が出るか
には個人差が大きく、「○歳になったら必ず起こる」というものではありません。
どれくらいの人が悩んでいるの?
厚生労働省が男性更年期質問票(AMSスコア)を用いて行った調査では、40歳以上の男性のうち「軽症以上」のスコアだった人はおよそ3〜4割と報告されています。つまり、「何となく不調」を感じている中高年男性は決して少なくありません。※厚生労働省資料による
一方で、「更年期かもしれない」と自覚して医療機関を受診している人はその一部にとどまり、多くの方が
- 「ただの疲れ」
- 「年のせい」
- 「性格の問題」
として我慢してしまっているのが現状です。
男性更年期で起こりやすい主な症状
男性更年期では、次のような症状が組み合わさって現れることが多いとされています。
身体面の症状
- 慢性的な疲労感・倦怠感
- 筋力低下、体力の落ち込み
- お腹まわりの脂肪が増えやすい
- ほてり、発汗(ホットフラッシュ)
- 関節や筋肉のこわばり、痛み
- 睡眠の質の低下(寝つきが悪い、途中で目が覚める)
心の症状
- やる気が出ない、意欲低下
- イライラしやすい、怒りっぽくなる
- 気分の落ち込み、不安感
- 集中力・記憶力の低下
性機能の症状
- 性欲の低下
- 持続しにくい
- 朝元気がない
これらはうつ病や睡眠障害、生活習慣病などとも重なる症状です。自己判断で「男性更年期に違いない」と決めつけず、気になる症状が続く場合は一度医療機関で原因を丁寧に調べてもらうことが大切ですね。
自分でできる簡単セルフチェック
男性更年期のスクリーニングには、「AMSスコア」という質問票がよく使われています。正式なチェックは医療機関で行う必要がありますが、日常生活の中で次のような変化が複数あてはまる場合は、早めに相談を検討してよいサインです。
- 以前より明らかに疲れやすくなった
- 好きだった趣味や仕事への興味が薄れてきた
- 眠りが浅く、日中も強い眠気がある
- 些細なことでイライラしたり、落ち込んだりする
- 性欲が落ちた、性機能の変化が気になる
- 検診でメタボリックシンドロームを指摘された
病院ではどんな検査・治療をするの?
まずは問診と質問票
受診の最初のステップは、症状や生活背景についての丁寧な問診です。必要に応じて、AMSなどの質問票で症状の程度をスコア化します。
血液検査でテストステロンを測定
LOH症候群が疑われる場合は、朝の空腹時に採血をして、血中の総テストステロンや遊離テストステロン(フリーテストステロン)を測定します。
日本泌尿器科学会などがまとめた診療の手引きでは、
- 総テストステロン 250 ng/dL 以下
- または遊離テストステロン 7.5 pg/mL 以下
といった値を目安に、症状とあわせて治療を検討することが示されています。
ただし、
- 値が基準より高くても症状が強い人
- 値は低めでも症状が軽い人
もおり、「数字だけ」で判断できる病気ではありません。他の病気(甲状腺の病気、うつ病、睡眠時無呼吸症候群 など)が隠れていないかも同時に確認していきます。
主な治療の選択肢
◇生活習慣の見直し
十分な睡眠をとる適度な運動(有酸素運動+筋トレ)体重管理、禁煙、飲酒量の見直しなど、基本的な生活習慣の改善は、多くの医療機関でまず勧められます
CHIKAまずはあまり難しいことを考えず「気分転換に少し散歩をしてみる」程度で体を動かしてみましょう。少しの時間でも良いのです。
◇薬物療法(第一選択ではありません)
テストステロン補充療法(注射や外用剤など)必要に応じて漢方薬や抗うつ薬・抗不安薬 など。ただし、テストステロン補充療法には前立腺の病気や血栓症などに注意が必要で、前立腺がんの既往などがある場合には行えません。必ず専門医とリスク・メリットをよく相談したうえで判断します。
今日からできる男性更年期ケアのポイント
まず、日常生活の中でできることはたくさんあります。ここでは取り入れやすい対策をまとめます。
1. 睡眠の質を整える
テストステロンは深い睡眠中に多く分泌されることが知られています。寝る直前までスマホやPCを見続けると、脳が興奮したままで深い睡眠に入りにくくなります。
- 就寝1時間前にはスマホ・PCをなるべくオフにする
- 寝酒でごまかさず、ぬるめのお風呂やストレッチでリラックスする
- 毎日ほぼ同じ時間に寝起きする
2. 適度な運動+筋トレを習慣に
テストステロンは筋肉量とも関係しており、無理のない範囲での筋力トレーニングやウォーキングは、心身の調子を整えるのに役立ちます。
- まずは「1日20〜30分の早歩き」から
- 週に2〜3回、スクワットや腹筋など簡単な筋トレをプラス
激しすぎる運動は逆に体への負担・ストレスになることもあるので、「少し息が上がるけれど会話はできる」程度を目安に始めてみてください。



最近はYouTubeなどでも家で隙間時間に出来る筋トレ動画などを上げてくれている方が多いですよね
3. バランスの良い食事を心がける
テストステロンの材料になるのはタンパク質や脂質です。極端な糖質制限や脂質制限、過度なダイエットは、かえってホルモンバランスを乱すことがあります。
- 肉・魚・卵・大豆製品など、良質なたんぱく質をしっかりとる
- 牡蠣やレバー、ナッツ類など、亜鉛を多く含む食品を適量とる
- 野菜や海藻類を組み合わせて、ビタミン・ミネラルを補う
- アルコールや甘い飲み物の「飲みすぎ」に注意する
サプリメントは補助的な位置づけです。持病のある方や薬を飲んでいる方は、自己判断で多種類を飲み合わせる前に、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
4. ストレスとの付き合い方を見直す
男性更年期の症状は、仕事や家庭のストレスで一気に表面化することもあります。
- 完璧主義を少し緩める
- 一人で抱え込まず、家族や同僚、専門家に相談する
- 趣味やリラックスできる時間を意識的につくる



「真面目で責任感の強い人ほど、我慢しすぎてしまう」というのは、現場でよく感じることです。
心の負担を少し軽くすることも、立派な治療の一部です。
受診の目安とまとめ
次のような場合は、自己流の対策だけにこだわらず、泌尿器科や男性更年期外来、内分泌内科などへの受診を検討してください。
- 不調が3か月以上続いて日常生活や仕事に支障が出ている
- 気分の落ち込みが強く、「消えてしまいたい」といった考えが浮かぶ
- 性機能の変化が気になり、パートナーとの関係にも影響している
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病があり、体調の変化が気になる
男性更年期(LOH症候群)は、「加齢だから仕方ない」とあきらめるしかない状態ではありません。ホルモンの変化に上手につき合いながら、生活習慣の見直しや適切な医療の力を借りることで、再び自分らしさや活力を取り戻している方はたくさんいます。
ご自身はもちろん、お父さんやパートナーの「最近ちょっと元気がないな」と感じたときにも、「もしかして男性更年期かも?」という視点を、頭の片隅に置いていただければ嬉しいです。



この記事の冒頭で出てきた「会社員Aさん」のその後ですが、軽い運動からキックボクシングの教室に通い始め、抱えていた問題がウソのようにクリアになったとのこと。運動効果+ストレス発散になっているのだと思います!










