よく「なぜ薬剤師になったのですか?」と聞かれますが、正直に言うと、偶然と消去法だけです。
高校生のとき、進路を考えた際に文系科目には興味がなく、苦手なものは「血液」と「数字」。
いろいろと得意ではないものから逃げていた結果、選択肢として残ったのが薬学部でした。そんな中で「生物」と「化学」は好きだったので、その科目で勝負できる薬学部は自分に合っているように思えたのです。
「薬売師」にならないために
薬剤師として25年以上働いてきましたが、業界は大きく変わってきています。そんな中で私が尊敬する先輩から「薬売師(やくばいし)になるな」と教えられた言葉が、今も心に残っています。
現代の薬剤師は、一部を除いて多くの場合、医師の処方箋に基づいて調剤し、患者さんに薬を渡す役割が主だと思います。
しかし、将来的には調剤補助員や機械がこれを担うようになるでしょう。たとえば、今では軟膏の「練り」も機械で簡単にできてしまい、シロップや粉薬の調合も数字を入力するだけで機械が自動で行ってくれます。
一方で、昔は患者さんが持ってきた薬を見ただけで「これは〇〇の薬」「こんな副作用がある」などとアドバイスするのも薬剤師の価値の一つでしたが、今はネットで調べればすぐに情報が手に入ります。薬剤師としての役割が変わってきていることに、私自身も悩むことが増えました。
「薬」だけでは健康は得られない
昔はがむしゃらに勉強をして、患者さんが適切に薬を使えるようにしてあげることが役割だと思っていました。しかしある時ふと思ったのが「薬は根本的な解決にはならない」ということ。。
このことに気づいてからは、患者さんと話す際、薬を使うだけでなく、生活習慣や食事についてもアドバイスをするようになりました。
体の中で薬がどう代謝されるのか?それに伴ってどんな効果と副作用が出るか?どのくらいで効果が出始めるのか?という情報は(とても大事ではありますが)自分の中で、優先順位が落ちていきました。
それよりも、「どうしたら薬を減らせるか」という情報提供に努めたいと考えるようになっていきました。
例えば頭痛の薬をもらいに来た患者さんには、貧血やホルモンバランスの話、スマホの見過ぎや睡眠不足の話などもします。(明らかに「うるさいな」という顔をされることも多々あります(笑))
そして、コロナ禍以降、薬不足やワクチンへの依存、色々な意味で「薬」に対する考え方も変えていく必要が出てきました。
私たちの日々の健康を守るには、まず生活習慣や食事を見直すことが何よりも重要だと強く思います。
薬剤師としての今後
時代の流れは薬局業界にも押し寄せており、昔ながらの個人経営の薬局は減少し、大手の薬局が増えてきています。
小さな調剤薬局ならではの良さや特色が無くなっていくことを考えると一抹の寂しさもあります。
しかしながら、相談薬局や漢方薬局というカテゴリーもあり、こういった薬局はまだまだ個性的な薬局が残っていますね。
私自身もこれからのキャリアについて、自分の軸をしっかりと見つめ、何を選択していくべきか考えながら歩んでいきたいと思っています。